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東京高等裁判所 昭和34年(く)99号 決定 1959年10月14日

少年 A(昭一六・八・二生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

申立人等の抗告理由の要旨は、

「自分(少年A)は、強姦致傷の点については何もしていない。従つて自分がK、Hと共謀の上S子を強姦し傷害を負わせたとの事実を認定した原決定には重大な事実の誤認がある。又Hは試験観察補導委託であるのに、自分は少年院に送致されたのは著しい不当な処分である。」というのである。

よつて本件保護事件記録(昭和三四年少第一二九三四号、同第一四三七三号)及び調査記録を精査して見ると、強姦致傷の点については、被害者S子の司法警察員供述調書(二通)、Hの検察官供述調書、Aの検察官供述調書によれば、少年はH、Kと共謀してS子を輪姦し同女に傷害を負わせたことは明白であつて、原決定に重大な事実の誤認があると見るべき事由は少しもない。又右各記録によれば、少年はいづれも東京家庭裁判所に於いて、昭和三三年一月二四日窃盗、傷害保護事件で不処分決定、同年三月二七日恐喝、暴行、傷害保護事件で不処分決定、同年五月二一日道路交通取締法違反保護事件で不開始決定、同年八月一三日恐喝、同未遂、暴行傷害保護事件で保護観察に付する処分を受け、その保護観察中毫も反省の色なく本件犯行に及んだもので、鑑別及び調査の結果に徴しても、少年の非行が習慣化し、内省力に乏しく、更生意欲の見るべきものなく、もはや在宅処遇の段階ではなく、その性格を矯正する為には同人を中等少年院に収容保護することが適切と認められ、原決定に著しい不当な処分と目されるような跡は少しもない。

よつて申立人等の本件抗告は理由がないから少年法第三三条第一項に則つてこれを棄却することとし、主文の通り決定する。

(裁判長判事 尾後貫荘太郎 判事 堀真道 判事 西村康長)

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